抄録
背景
特別支援学校では通学が困難な児童生徒のために、教員が自宅や病院等へ赴いて指導する「訪問教育」が行える。今回、在宅の終日人工呼吸器使用児に対して診療所と学校が連携して訪問教育を行っている1例を報告する。対象は7歳男児。周生期低酸素性脳症後遺症で24時間呼吸器使用。脳波はほぼ平坦で自発運動は見られない。NICU長期入院の後、2歳半から在宅に移行した。両親共働きであり、日中は診療所併設の一時預かり施設「輝きの杜」で過ごしている。
神奈川県では現在、特別支援学校に数名ずつの看護師は配置されているが、医師は常駐していない。そのため、呼吸器を使用している超重症児の緊急対応を考えると、学校で安全に指導することが困難である。就学猶予の選択も考えられたが、輝きの杜の協力を得て訪問という形で教育の機会が保障できた。
目的および方法
実際の指導場面では、朝の歌(教員の生歌)や、きゃりーぱみゅぱみゅ(CDの音楽)を聞かせる関わりを重ねてきた。また、より強く感覚を刺激するため、骨伝導イヤホンの使用を試みた。その上で、生歌の前後、CDの前後に心拍数(HR/分)、唾液中のアミラーゼ値(Amy IU/L)を測定し、感覚受容の指標となるか検討を行った。
結果
HRは18回計測し、生歌の前後の平均は67.7、66.8。CDの前後の平均は66.8、66.3と、前後で有意な変動は見られなかった。Amyは15回測定し、生歌前後の平均は56.9、39.9で、統計学的に有意な変動を認めた。CDの前後の平均は28.6、25.2と有意な変動は認められなかった。
考案およびまとめ
生歌は感覚刺激として有用であった。一方で指標がHR、Amyの2つであり、施行回数も少ないため、まだ検討の余地が残る。しかし、刺激に対する反応が外見上認められない超重症児に対する関わりとして生歌が、感覚受容の指標として唾液中Amyが有用である可能性を感じた。