日本重症心身障害学会誌
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O-1-G30 24時間姿勢管理により胸郭変形が改善した児の一例
吉井 牧子菅沼 雄一片山 由美子鈴木 綾子橋本 廣澁谷 聖月
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2015 年 40 巻 2 号 p. 228

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抄録

はじめに 重症心身障害児の胸郭変形はしばしば進行性を示す。Goldsmithらが考案した胸郭扁平率(厚さ/幅比)は、山本らによれば正常成人の平均は0.69である。今回、筋緊張が高く側臥位姿勢で過ごす時間が長いため胸郭自体と腕の重みで胸郭扁平率が高くなる傾向にある児に対し、24時間姿勢管理を徹底し改善した結果を得た。合わせて呼吸状態の観察を行ったので報告する。 方法 対象は4歳男児。Gross Motor Function Classificasion System レベル5。診断名はPEHO症候群、新生児脳症後遺症、先天性心疾患(VSD、PH)。人工呼吸器管理(SIMV、自発呼吸あり)。円背(上部胸郭の挙上、背側肋骨の拡張)悪化傾向。喉頭気管分離術済みであるが背臥位で心拍数上昇と動脈血酸素飽和度の低下を示すため長時間の側臥位管理。方法は、下部肋骨への胸郭自体の重みを軽減するための体幹パット、胸郭自体への腕の重みを軽減するための腕パットがついた姿勢保持具を作成し、24時間の姿勢管理に使用した。使用前後で胸郭の厚さと幅の計測、呼吸状態の観察を行った。 成績 パット装着時に肩周囲の筋緊張が軽減し努力呼吸が減少した。3週間で胸郭扁平率(厚さ/幅)は1.39から1.10へ改善した。 結論 下部肋骨への胸郭自体の重みと胸郭への腕の重みを軽減したことで胸郭の可動性が改善した。呼吸困難感より生じていたと考えられる筋緊張が軽減したことでさらに換気が促され、胸郭変形の改善につながったと考えられる。適切な姿勢管理により、呼吸状態、胸郭変形改善の支援が可能であった。

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© 2015 日本重症心身障害学会
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