日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-1-G31 重症心身障害児の重度痙縮に対するバクロフェン持続髄注療法の経験
夫 敬憲谷口 秀和亘 雄也兼松 康久中川 義信
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2015 年 40 巻 2 号 p. 229

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抄録

はじめに バクロフェン持続髄注療法は重度の痙縮に対し有効であるとの報告が多くある中で、本邦においては充分浸透している治療法とは言えない感がある。今回、われわれの施設で行った本治療法の結果を報告するとともに、今後の課題について考察したい。 症例 ポンプ設置年齢6歳〜45歳(平均23歳)、男12例、女3例の計15例である。当院重症児者施設入所中10例、在宅通院5例。経過観察期間は1年6カ月から13年(平均6,2年)。基礎疾患は脳性麻痺12例、頭部外傷後遺症2例、もやもや病1例。全例、痙直型四肢麻痺で大島分類1である。気管切開(含喉頭分離)は12例に施行されており、全例経鼻または胃瘻からの経管栄養である。 結果 1例でポンプ留置部の皮膚壊死を起こし、ポンプ除去を余儀なくされた。この症例は、体格が小さい上に大腿の屈曲拘縮が強くポンプ留置部に強い負荷が掛かっていたのが原因と考えられた。その他の14例で痙縮の指標であるAshworth scoreは改善し、現在まで維持できている。関節の拘縮を既に認める症例の関節可動域の改善はなかったが、拘縮変形の進行は認めない。若年齢に行った例では、年長者に比べて関節拘縮、側弯の程度が軽い印象である。 1例でポンプ周囲の髄液貯留を認めたが、自然消失した。1例で経過中にカテーテルが脊髄くも膜外腔に迷入したため、カテーテルの再挿入が必要となった。また、痙縮に伴う上部消化管出血、上気道炎などの症状も軽減している印象である。 結論 バクロフェン持続髄注療法は重度の四肢痙縮に対し非常に有効であった。ただ、無視できない重篤な合併症も報告されているので、その適応には慎重な態度と充分な管理体制が必要である。本治療を主に行っているのは脳神経外科医であるが実際問題として、重症心身障害児医療に従事している脳神経外科医は希有である。このことが、本治療法が浸透しない一因となっているのではないか。

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