日本重症心身障害学会誌
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O-1-G32 重症心身障害児(者)における骨密度と骨代謝の検討
酒井 朋子加我 牧子岩崎 裕治
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2015 年 40 巻 2 号 p. 229

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抄録

はじめに 現在、加齢に伴う原発性骨粗鬆症には、骨密度と骨代謝の状態に基づき、治療が選択されている。今回、重症心身障害児(者)の骨粗鬆症の骨密度や骨代謝の状態を把握する目的で、当センター入所者に対し、原発性骨粗鬆症の検査項目である骨密度や血液などの諸検査を行った。 対象と方法 症例は、当センターに通院および入所中の方の53名、内訳は、男性26名、女性27名、年齢は平均33.2歳であった。先ず、踵骨の骨密度を超音波で測定し、WHOの成人骨粗鬆症診断基準であるTスコアおよび小児の診断基準であるZスコアを算定した。また、血液検査を行い、骨型ALP、TRACP−5b、ucOC、1−25ジヒドロキシビタミンD、PTHインタクトを測定した。 結果 骨密度は、平均Z−scoreが-3.85、平均T−scoreが-3.60であり、多くは若年成人時、重度骨粗鬆症であり、加齢変化は明らかでなかった。またBAP、TRAPともに正常値であり、骨代謝は正常であった。ucOC上昇すなわちビタミンK不足を46例中19例(41.3%)に認めた。 考察 今回、半数の症例に、ビタミンK不足を認めたため、さらに経管栄養との関連を検討した。ビタミンK不足例の19例中、16例、84.2%が経管栄養者であり、超高値を示していた。経管栄養群と非経管栄養群の2群に分けて、ucOC値の平均値についてt検定を行うと経管栄養群に有意にucOC値が高かった。骨密度においては、経管栄養群、非栄養群の2群間で、zスコアの平均値は経管栄養群に有意に高かった。骨粗鬆症の治療薬であるビタミンKを使用している症例に注目してみると、1例の経管栄養者を除いてビタミンK投与例は、突出してビタミンK不足を呈する者はいなかった。経管栄養例では、感染や抗生剤投与などによる減少も見込まれ、慢性的なビタミン不足に対するビタミンK投与が骨質の改善につながる可能性がある。

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