抄録
目的
重症心身障害児(以下、重症児)の胃食道逆流症(GERD)に対する噴門形成術の術式はDor法などのanterior wrappingとToupet法、Nissen法などのposterior wrappingに大別される。当科では2002年から腹腔鏡下手術を導入し、2010年まで主にanterior wrappingを施行、2011年からposterior wrappingを第一選択としている。今回その治療成績に関して検討した。
対象と方法
2002年から2014年までに重症児に対して施行した腹腔鏡下噴門形成術症例29例を対象とした。全32例の平均年齢は12.3歳(0〜39歳)であり、16歳以上の症例は12人であった。性別では男児22例、女児7例であった。術式は再手術も含め、Dor法13例、Toupet法3例、Nissen法13例であった。Dor法をanterior wrapping(AW)としToupet法・Nissen法をposterior wrapping(PW)として後方視的に検討した。
結果
同時に胃瘻造設を施行したのは28例であった。AWとPWでは手術時間、食事開始時期について統計学的有意差は認めなかった。術中出血量はAWよりもPWの方が有意に少なく、入院日数においてはAWよりもPWが有意に短かった(p<0.05)。再発率に関してはAWで13例中3例(23%)、PWで16例中1例(6.25%)であった。AWの再発症例3例には半固形栄養を導入して経過観察中である。PWのうちToupet法の1例で再発し、再手術を施行したが、Nissen法では再発は認めなかった。
考察
当科において重症児に対する噴門形成術の治療成績では、PWの方がAWよりも術中出血量や再発率の面からもより有用な術式であった。また、PWにおいてもNissen法は再発を認めず重症児では推奨される術式であった。