抄録
目的
愛知県は2014年に、県内(名古屋市を除く)に住所を有する重症心身障害児者全員(1,929名)を対象とした実態調査を実施した(郵送による無記名式質問紙法:有効回答率68.8%)。ここから、在宅の重症心身障害児者の実態を報告する。
方法
県の担当者から調査協力者に提供された結果を使用した。在宅者の結果を抽出し、可能なものについては、2005年に実施した前回調査の結果と比較した。
結果
在宅者、すなわち病院または施設に3カ月以上の入院・入所をしていない人は1,474名で、前回調査の1.3倍に増えていた。10歳代を除くすべての年齢層で増加し、特に60歳代(前回6名、今回24名)、70歳以上(前回4名、今回9名)の増加率が高かった。一方、前回調査の10歳未満がおおむね今回の10歳代に相当するとみなすと、この世代では1.7倍に増加していたのに対し、他の世代の人数は減少していた。有効回答985件(有効回答率66.8%)の84.4%が母親による記入であったが、50歳以上では兄弟姉妹やその家族による記入が合わせて約半数を占め、両親の合計(36.6%:前回は61.6%)を上回った。グループホーム居住者41名以外の同居家族をみると、50歳以上では、親とでなく兄弟姉妹やその家族と同居している人が30.6%あった。今後の住居の希望は、全体では、施設希望者の割合が前回の1.1倍、グループホーム希望者の割合が1.3倍に増えるとともに「わからない」という回答の割合が減り、特に40歳代では前回の5割(12.4%)、30歳代でも前回の6割(13.0%)に減少していた。一方で、50歳以上では「わからない」が1.7倍(39.0%)に増加していた。
考察
在宅の重症心身障害児者は増加しており、これは主として若年世代における増加によると推定された。一方で、高齢者の増加も認められた。兄弟姉妹やその家族がキーパーソンに移行する中、代弁者や家族としての判断に戸惑っている現状が浮き彫りとなり、介入の必要性が示唆された。