抄録
はじめに
当院の重症心身障害児(者)病棟では、強度行動障害を持たれている利用者が多く入院されている。その中でも、脱衣(おむつ外し)が頻回で、興奮して自傷される利用者に対して、行動療法を取り組んだので、その経過を報告する。
対象者
45歳、女性。診断名:最重度知的障害。強度行動障害スコア:32点。津守式発達検査、発達年齢:1歳4カ月。大島分類:17。
方法
1カ月間ベースラインを測定し、その後、午前と午後の一定時間内に問題行動が生起しなければ、毎回強化を行った。強化子は、お菓子を使用した。また、毎月カンファレンスを実施して、職員の関わりを統一した。
結果
ベースライン期の脱衣平均回数:2.1回/日、行動療法開始3カ月間の脱衣平均回数:1.5回/日(1カ月目:1.9回、2カ月目:1.7回、3カ月目:1.2回)。強化の成功率、AM:86.2%、PM:49.0%。また、午後の天気が良い日には、自ら日の当たる場所に行かれて、その後、興奮されて、脱衣や自傷につながることが多い。そのため、興奮時には、デイルームから自室や診察室に早めに誘導して、脱衣や自傷を予防した。
考察
行動療法は、客観的に測定可能な「行動」を対象に取り組むことが可能なため、重度の知的障害を伴った強度行動障害児(者)に対しても導入しやすく、効果も現れやすい。当研究でも、問題行動が、3カ月目にはほぼ半減しており、一定の効果が認められた。しかし、問題行動を完全に無くすまでには至らなかった。その要因としては、機能面に対するアプローチが不十分なため、問題行動の原因を直接取り除けていないことや、本人の理解力から、シール等の活用が困難で、毎回強化をしなくてはならず、強化子の飽きが挙げられる。そのため、今後は、応用行動分析の視点や、連続強化から間欠強化への移行手続きを工夫することが必要になると思われる。