抄録
はじめに
重症心身障害児(者)においては、安全対策のため身体拘束を実施している現状がある。重症心身障害児(者)病棟に勤務する看護師の身体拘束に対する認識とその際の感情の特徴を明らかにすることで、拘束解除のための課題を明確にできるのではないかと考え本研究に取り組んだ。
研究方法
1.対象および調査方法:A病院の重症心身障害児(者)病棟に勤務する看護師64名に無記名自記式アンケートを実施。
2.調査内容:基本属性(性別・年齢・看護師の経験年数)、身体拘束を行う際最も抵抗感のある行為(9項目)、身体拘束に対する認識(12項目)、身体拘束を行う際の感情(33項目)とし、統計処理を行った。
3.倫理的配慮:対象者に研究目的、方法、調査参加の自由、不利益排除、個人情報保護について、得られたデータの管理方法を書面で説明し質問紙の提出により同意を得た。また、本研究はA病院倫理審査委員会の承認を受けた。
結果
アンケート回収率79.7%。 最も抵抗感のある行為では、「高いベッド柵」との回答が最も多かった。 認識の調査では、「拘束であるがやむを得ない」との回答が全体の7割を占めた。「点滴や栄養チューブを抜かないように上肢を縛る」等、安全対策に対する項目ではやむを得ないとの認識が高かった。感情の調査では、「抑制を行わなければ重大な事故につながる可能性がある」が最も強く思う項目であった。
考察
認識、感情の調査から、患者の治療や安全を重視する傾向が高かった。拘束に替わる代替策を見いだせていないため、やむを得ないとの認識になっていること、拘束解除カンファレンスが定着していないことが明確になり、今後の課題である。
まとめ
1.身体拘束に対する認識は「やむを得ない」が約7割を占めた。
2.身体拘束を行う際安全を重視する傾向が高い。
3.定期的にカンファレンスや勉強会の実施が必要である。