抄録
重症心身障害児者では、脊椎・胸郭の変形や頸部のねじれ、胸郭上部の扁平化、過緊張による異常姿勢から、気管の狭窄や変形を生じやすく、また、気管切開部の低位置や、喉頭気管分離術での気管の前方への偏位などの問題があることが少なくない。このため、レディーメイドの気管カニューレでは、カニューレ形状(角度など)が本人の気管の状態と適合しなかったり長過ぎることによって、先端が気管壁に無理に当たることなどにより、呼吸状態の悪化、気管の損傷や肉芽などが生じやすく、最悪の場合はカニューレが気管内壁に当たり閉塞したり気管腕頭動脈瘻を発症する危険もある。そのため、カニューレの固定法の工夫(フレームの片側を下に引いての固定など)などにより調節をすることがあるが限界がある。対策として、当院では外来入所合わせて11名の患者で、特注のカニューレで、チューブの長さ、チューブカーブの角度、フレームとチューブの角度などを、状態に合わせて作成したものを使用してきた。
特注カニューレ使用例のほとんどで喉頭気管分離術を受けており、特注カニューレを選択した理由として最も多いものは気管前壁の難治性肉芽であり、チューブの長さの短縮化や、チューブカーブの調節により対応した。
フレームとチューブの角度調整は体軸と気管軸の不一致に対応するため、彎曲などが強い患者にとって非常に有益である。
迷走神経反射や肉芽の位置が腕頭動脈と接近しているため特注カニューレを使用している例もある。
特注カニューレは、コーケンシリコーン(高研)、メラソフィットクリア・メラソフィットフレックス(泉工医科工業)である。
レディーメイドの気管カニューレも最近は多様なものが製品化され選択肢は拡がりつつあるが、それでも対応が困難な場合には、気管内視鏡や単純XP、CTでフィティングを検討しながらの特注カニューレの使用が有用である。