抄録
はじめに
長期入院している重症心身障がい児(者)は、社会性が乏しく周囲への関心が薄いことから、自ら行動を起こし日中の覚醒時間を有効に過ごすことは難しい。看護師が覚醒を促すために一対一で関わる時間も限られている。また、睡眠時間は発達とともに短くなり特に50歳以降は、中途覚醒が増えると言われている。良質な睡眠は患者の心身の安定や、日中の活動意欲にもつながる。15時以降の昼寝は、夜間の睡眠の障害になるという文献がある。本研究の対象患者は、早朝覚醒が見られ、熟睡できず朝食後から日中寝ていることが多い。これは、環境の変化が少なく刺激が乏しい療養生活からの生活リズムのくずれによる睡眠障害ではないかと考えた。そこで、患者の15時以降の生活習慣を見直し、生活リズムを改善すれば早朝覚醒が解消できると考えた。
目的
15時以降の生活習慣が睡眠リズムに及ぼす影響を明らかにする。
対象と方法
対象:A氏 脳性麻痺、精神遅滞、50代男性。17時に就床、18時に入眠、夜間3時に覚醒、日中は寝ていることが多い。
介入:(1)就床時間を17時から20時に変更。(2)就床時に5分程度のマッサージとストレッチを行う。
評価:介入前後に覚醒・睡眠時間の調査を7日間行い患者の様子と合わせて分析。
結果
導入時は、車椅子乗車中に大声を出し落ち着かない様子であったが、しだいに穏やかに過ごせるようになった。
朝食後3時間、昼食後1時間の午睡が無くなった。
睡眠時間が18時〜3時から21時〜6時になった。
考察
就床時間を3時間遅らせたことは、車椅子乗車時間の延長による活動量の増加となり、9時間の睡眠を保ったままでの早朝覚醒の改善につながった。また、午睡が無くなったことでTVや窓の外を見る等、周囲への関心を示す行動が増え、動作もスムーズになった。15時以降の活動量を増やし生活リズムを改善することは、早朝覚醒の解消に効果があることが分かった。