抄録
はじめに
A氏は感染症により接触予防策を行っていることや長時間による経管栄養により隔離された中ベッド上で過ごしていることが多い。日中声かけなどの刺激に覚醒しないことや、夜間軽い刺激で覚醒してしまうこともあり生活リズムが崩れた状態である。そこで、車いす乗車により生活リズムを図ることを目的で取り組んだ。
対象
A氏 40歳代 男性 新生児仮死後遺症 経管栄養18時間/日 AmpCより接触予防策
倫理的配慮
当センター看護科倫理委員会の承認を受け、研究目的などを口頭、文書により利用者と保護者に説明し同意を得た。
方法・結果
車いす上での経管栄養法について主治医と検討した。また、車いす乗車時の感染対策について周知し、看護介入前後の活動状況、看護介入後の睡眠状況について記録した。
看護介入前の乗車回数は平均2回であったが、看護介入後は平均5回であり乗車回数は増加している。看護介入後の睡眠時間について、車いすに乗車した日は平均4.13時間、車いすに乗車しなかった日は4.07時間であり、わずかではあるが増加がみられた。車いす乗車時の反応・表情として「目を開け周囲を眺める」13回、「視線を合わせる」11回、「笑顔・口角があがる」2回、「穏やかな表情」3回見られた。
考察
夜間の睡眠時間を得ることについてわずかな増加はみられたが、生活のリズムを整えるまでには至らなかった。A氏は目に見える発作がなくても常に発作波が出ているため、少しの刺激で発作を誘発してしまうことがある。刺激を軽減する工夫や睡眠環境調整なども生活リズム改善に影響するのではないかと考えられる。
車いす乗車により散歩に行くことで人との関わりや環境などの刺激を受けることにより表情も変化しQOLの向上につながったと考える。
結論
車いす移乗による活動拡大だけでは生活リズムの調整は不十分であったが活動の拡大により表情の変化がみられQOLの向上につながった。