抄録
重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))における経腸栄養について、栄養学的合併症、「経腸栄養」という行為そのものによる合併症とその対策、さらに栄養剤(薬品型経腸栄養剤、食品型濃厚流動食を含む)の選択について自験例を中心に述べた。重症児(者)は一日の摂取カロリーが少ないために、摂取する微量元素やビタミン、ナトリウムなども少なくなりがちで、これらの欠乏に注意が必要である。また、栄養剤にはカルニチンやヨウ素、食物繊維などをまったく含有していないものもあり、なんらかの方法での補充が必要である。「経腸栄養」という行為そのものによる合併症としては、ダンピング症候群、胃食道逆流存在下での半固形化栄養剤による窒息、食物繊維による便量の増加に伴う便秘や嘔吐、空腸栄養での微量元素欠乏などを経験した。現在、栄養剤は100種類以上が市販されているが、それぞれ特徴があり、対象となる重症児(者)の状態にあわせて使用するのが望ましい。