抄録
はじめに
重度脳性麻痺は、日常生活動作(以下、ADL動作)の獲得が大きな課題となるが、運動障害に加え、感覚障害や視知覚機能障害、認知機能障害など、障害が多岐にわたることで、動作の獲得には多くの支援と努力を要する。作業療法士がADL動作に介入する際には、直接的訓練だけ絵はなく、動作の獲得に必要な運動機能や感覚機能、認知機能に間接的にアプローチすることでも、ADL動作の改善に向けた支援を行っている。今回、痙直型両麻痺を呈する女児の更衣動作獲得に向け、間接的訓練から直接的訓練へと段階的に移行し、自立度が向上した症例を経験したため、以下に報告する。
症例紹介
症例は10歳代前半の女児。診断名は脳性麻痺で、痙直型両麻痺を呈する。大島の分類は1。表在感覚や深部感覚には鈍麻などは認めず、新規の感触等には拒否を示すものの、慣れることでできていた。運動障害では下肢は屈伸が可能な程度であるが上肢の随意性は高く、両側の協調動作も可能であった。初期評価時、更衣動作はわずかな協力動作がみられるものの、ほぼ全介助でありFIMは1点であった。
経過
間接的訓練として、腕に通した輪を抜く課題や、腰部に巻いた布を引き下げる課題、裾に目印をつけ見つける課題などを行い、動作の習得を試みた。また、感覚入力として、体表面を布が移動する触感覚をイメージしやすくゴムバンドを用いて引き抜く課題などを行った。それぞれの課題が習得できた後、更衣場面に直接的に介入を行い、姿勢設定や、動作指導などを行った結果、FIMは4点まで向上した。現在は、時間を要するが最初の設定のみ介助で出来ており、実用的な機能の一つとして定着している。
考察
重度脳性麻痺においては、ADL動作の獲得には身体機能面が大きな問題となり、機能向上が第一目標となる。今回は動作の習得だけではなく、感覚面への介入と直接的場面での動作指導を行うことで、自立度が大きく向上したと考える。