抄録
目的
言語的表現が困難な脳性麻痺を有する子どもと親を対象に、痛みの体験時に子どもが示すサインを客観的に捉え、生活の中で痛みのサインを出している状況を明らかにすることである。
研究方法
データ収集は、子どものサインを客観的に捉えるために、理学療法時や自宅での日常生活における子どもの様子と子どもの表情を、参加観察およびビデオ撮影した。子どもの表情は解析ソフトであるfacial Action Coding System(FACS)のAction Unit(AU)を使用した。同時に痛みの評価スケールとして、PPP(Pediatric Pain Profile)を使用した。
結果
研究対象者は8組の子どもと母親であった。子どもは6カ月から6歳で、すべての子どもが重度の脳性麻痺を有していた。母親は子どもの表情・体の動き・泣く・発声・生理学的変化・動作を捉えていた。可視できるサインは、表情として、目・眉・頬・口など部分的な変化があり、体の動きでは体全体と四肢の表現があった。生理学的変化では、呼吸回数の増加、脈拍の増加を認めた。可視出来なかった子どもの表情も、すべての子どもにおいて表情分析により顔の一部分の変化を認めた。理学療法時にはPPP総得点が高値を示していた。
結論
重度の脳性麻痺を有する子どもは、理学療法時に関節運動や筋緊張を緩める際に痛みを感じており、重症度にかかわらず子どもは痛み時にサインを伝えていた。子どものサインを、表情、体の動き、泣き、発声、生理的変化、動作に分類した表を使用することにより、母親が子どもの示すサインを想起しやすく、子どもが示すサインを捉えることに有効であった。痛み評価としてPPPは言語的表現が困難な脳性麻痺を有する子どもに使用でき、子どもの痛みの状況や痛み緩和ケアを評価することに役立つものである。