日本重症心身障害学会誌
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P-1-E04 Rett症候群の生命予後改善のためにNPPVが有用であった2例
益山 龍雄岩崎 裕治加我 牧子
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2016 年 41 巻 2 号 p. 244

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抄録
はじめに Rett症候群は、特徴的な手の常同運動を呈し、主に女児に発症する神経発達障害である。症状は年齢依存性に変化し、急速な発達退行の後に回復期や安定期が存在する。成人期には、動きが減り、四肢の廃用性萎縮、関節拘縮を認め、痙縮、固縮、ジストニアなどが著明になる。現時点では、まだ根本治療はないが、生命予後を改善するものとして、これまで側彎予防や胃瘻による栄養改善などが報告されている。今回、夜間非侵襲的陽圧換気療法(夜間NPPV)の導入により、全身状態が改善した2例を経験したので報告する。 症例1 19歳女性 2歳で伝い歩き、以降退行。発語なし。3歳よりてんかん発作を認めた。14歳時に急性肺炎2回、16歳時にも2回急性肺炎から呼吸不全を来した。夜間NPPV導入、胃瘻造設を行った。NPPV開始後、状態安定し入院なく経過している。 症例2 33歳女性 3歳で座位、以降退行。発語なし。2歳半でてんかん発作を認めた。18歳より経管栄養併用、23歳時に胃瘻造設。25歳から感染を契機として急性呼吸不全を繰り返しNPPVによる治療を繰り返すようになった。28歳より在宅夜間NPPV開始した。設定の調節後、全身状態良好となり入院なく経過している。 考察 今回、経験した2例は、頻回の呼吸器感染、呼吸不全を繰り返した。入院治療時には、気管内挿管後に抜管困難となることを避けるために、急性期の治療としてNPPVを行い状態が改善したが、退院後、症状の改善と悪化を繰り返した。そのため、在宅での夜間NPPVを開始したところ状態が改善した。Rett症候群は、関節拘縮などにより、しだいに胸郭の動きが乏しくなるため、呼吸器感染症を繰り返す場合や呼吸不全を来すようになった場合には、NPPVを導入することが、気管切開せずに呼吸状態を改善でき、生命予後を改善するために有用である。
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© 2016 日本重症心身障害学会
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