日本重症心身障害学会誌
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P-1-E12 在宅重症心身障害児者の唾液中細菌数に関連する因子についての検討
高井 理人工藤 裕子中村 光一八若 保孝土畠 智幸
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2016 年 41 巻 2 号 p. 248

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抄録
緒言 重症心身障害児者(以下、重症児者)では合併症としての誤嚥性肺炎がしばしば問題となる。また、口腔内細菌が起炎菌となることが知られており、口腔ケアの重要性が周知されてきた。今回、在宅重症児者の唾液中細菌数を調査し、細菌数に影響を与える因子について検討したので報告する。 方法 当院患者のうち、訪問歯科診療を受けている在宅重症児者30名(1歳〜40歳、平均年齢13.7±9.7歳)を対象とし、調査期間は平成27年11月から平成28年1月までの3カ月間とした。調査は居宅訪問中(10時〜16時)に行い、舌下部に滅菌綿棒を10秒間浸して唾液を採取し、卓上細菌数測定装置(パナソニックヘルスケア社製)を用いて唾液中細菌数を測定した。また、全身状態(経管栄養、気管切開、人工呼吸器、唾液嚥下の有無)、口腔内状況(歯石、舌苔、齲蝕の有無)について調査し、それぞれの項目と唾液中細菌数との関連を統計学的に検討した。 結果 唾液中細菌数と有意な正の関連を示した項目は、気管切開「有」(p=0.027)、唾液嚥下「無」(p=0.010)、舌苔「有」(p=0.028)であった。 考察 唾液嚥下を認めない者の口腔内は、嚥下反射の低下により口腔内に唾液が長時間貯留するため口腔内細菌が増殖しやすい環境であると考えられる。また、気管切開の影響により嚥下運動が困難になっている可能性がある。舌苔の付着が多い者は、舌の運動性が低いため自浄作用が低下していると考えられ、口腔機能の低下が唾液中細菌数に影響を与えていると思われた。 結語 在宅重症児者において、嚥下機能や口腔機能が低下していると唾液中細菌数が多い。今後、この結果をもとに重症児者に対する誤嚥性肺炎の予防方法について検討する必要がある。
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© 2016 日本重症心身障害学会
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