抄録
はじめに
早期療育の一環として親子入園があり、当センターに年間50組前後が入園する。入園前に病棟看護師が家族と面談し入園中の目標を設定・共有している。今回、経管栄養のみの児に家族が経口摂取を希望し、看護介入により経口摂取が可能となった重症心身障害児を経験したので報告する。
事例紹介
A児、1歳7カ月、CP、超重症児スコア29点、人工呼吸器20時間以上/日装着。児の発する合図や反応は不明瞭だが、母親は児のモニターの心拍数や酸素飽和度の変動、わずかな体動などで児の要求を察しケアしていた。身長-2SD、体重-3SD、NGチューブからミルク・スープ・ソリタ水で総熱量約380キロカロリー/日注入。鼻呼吸(−)、口唇閉鎖(−)、舌突出軽度、嚥下運動確認できず、口腔内乾燥(+)、口腔内・口唇周囲に過敏(+)。
看護の実際
まず、摂食のための口腔の準備状態を整えるために、口腔ケアや間接訓練を継続して実施した。次に、ミルクの他に離乳食前期の注入を開始し、総熱量を増やし体重増加と腸の離乳を図った。また、離乳食を提供するにあたりA児の大豆・小麦アレルギーに対して栄養科と相談し減感作療法を進めた。夜間に濃厚流動が導入されたため、母に休息をとってもらい睡眠・心拍のチェックを続けた。しかし、心拍の上昇が見られたため、注入速度・開始時間・姿勢を調整し、日中座位で安定した。呼吸リハとして、バギング行うことで一回換気量が増え、肺胞が広がり深い呼吸ができるようになった。習慣化された口腔ケア・間接訓練により、徐々に嚥下機能が向上し、唾液嚥下が可能となり、味覚や臭覚刺激への反応も確認できた。
考察・まとめ
親子入園では体調管理と集中訓練が行われ、これが相乗効果となり、口腔機能にも良い影響を及ぼしたと考える。経口摂取の経験が少ない重症心身障害児にも、早期から体調管理と摂食機能訓練を行うことで、経口摂取の可能性を導くことができる。