日本重症心身障害学会誌
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P-1-E16 舌による食塊送り込みができない痙直型四肢麻痺患児の摂食時の体位の検討
小田 エリカ
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2016 年 41 巻 2 号 p. 250

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抄録
目的 口唇閉鎖ができず舌の動きに障害があり、顔をあげて重力で嚥下する痙直型四肢麻痺患児の摂食時の体位の調整により、嚥下しやすさ、むせの低減に効果があるか検証する。 方法 研究期間:平成27年8月13日〜9月2日。 対象 11歳女児、超低出生体重児、脳室周囲白質軟化症、痙直型四肢麻痺。緊張すると後弓反張がみられ姿勢がくずれやすい。ミキサー食を摂取し舌による食塊送り込みが困難。看護師が食事介助した際の座位時の角度、食事中の状況についてフローシートに記録してもらい、その中から30度〜45度(以下、45度)で介助した際と、50〜60度(以下、60度)で介助した際の状態について比較し、食事中の機嫌、むせの回数はマンホイットニー検定、食物の口腔内貯留、緊張、鼻からの逆流、食べこぼしの有無についてはフィッシャー直接確率法を用い、p<0.05を有意と判定した。 倫理的配慮 院内倫理審査委員会の承認を得、研究の主旨について家族に文書で説明し、同意を得た。 結果 口腔内貯留有りは45度20%、60度66%(p=0.022)で、45度の方が口腔内貯留が有意に少なく、スムーズに嚥下していた。食事中むせの平均回数は45度3.8回、60度0.67回(p=0.003)、45度の方が優位にむせが多かった。鼻からの逆流ありは、45度20%、60度50%(p=0.039)で、60度の方が多く、食事中の機嫌、食べこぼし、緊張の有無については有意差がなかった。 考察 45度の方が口腔内の食物貯留が少なかったのは、患児は舌による送り込みができないため、重力で食物を嚥下しており、口腔から梨状窩までの食物の移動がスムーズになるためであるが、一度に流れ込む食塊の多さがむせにつながったと考える。鼻からの逆流が60度に多かったのは、鼻咽腔閉鎖ができないため、咽頭に貯留している時間が影響したと考える。 結語 舌による食塊の送り込みができない痙直型四肢麻痺患児の摂食時の体位は、45度の方が食物の口腔内貯留が少ないがむせやすい。
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© 2016 日本重症心身障害学会
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