日本重症心身障害学会誌
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黒胡椒嗅覚刺激により嚥下機能が改善した蘇生後脳症の小児症例
中村 達也野村 芳子加藤 真希北 洋輔鮎澤 浩一小沢 浩
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2016 年 41 巻 3 号 p. 445-449

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抄録

大脳基底核損傷後には、咽喉頭の知覚低下により、不顕性誤嚥を来すことが多い。咽喉頭の知覚低下改善に、黒胡椒嗅覚刺激が有効であるとする先行研究があるが、これを小児に適応した報告はない。今回、黒胡椒嗅覚刺激により嚥下機能が改善した小児症例を経験した。症例は1歳3カ月時、脊髄梗塞後に生じた心肺停止による蘇生後脳症のため大脳基底核を損傷した。安静時の嚥下反射は認めず、気管内吸引は頻回であったが、味覚刺激時には嚥下反射惹起を認めた。また、嚥下造影検査では咽喉頭に嚥下前の食物の残留を認めるも誤嚥は認めなかったことから、咽喉頭の知覚低下が唾液貯留の主な原因と判断し、2歳3カ月より黒胡椒嗅覚刺激を行った。気管内吸引回数を指標に、A1B1A2B2デザインで検討したところ、黒胡椒嗅覚刺激時には気管内吸引回数が徐々に減少する傾向がみられ、最終的には1日数回程度まで減少した。黒胡椒嗅覚刺激は、本症例の咽喉頭の知覚を改善し、良好な唾液嚥下の契機となった。これは、黒胡椒嗅覚刺激が小児の咽喉頭知覚の改善にも有用である可能性を示唆する。

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© 2016 日本重症心身障害学会
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