日本重症心身障害学会誌
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Print ISSN : 1343-1439
特別講演
生きることは、聴くこと、伝えること
−表現のちからを信じて−
副島 賢和
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2017 年 42 巻 2 号 p. 129

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抄録
○さいかち学級(品川区立清水台小学校病弱身体虚弱児教育特別支援学級)について  昭和大学病院(東京都品川区籏の台一丁目)の入院棟17階にある特別支援学級です。昭和大学病院に入院している児童の中で、本人・保護者が希望し、医師が許可した病弱・虚弱の子どもたちが通っています。長期入院で入級している子どもで、教室に来ることができない場合は、毎日(教室の子どもの状況により、時間を検討する)ベッドサイド授業を行っています。さいかち学級の役割は『子どもたちの発達を保障すること』です。病棟スタッフの方達とチームとして活動しています。 ○不快な感情の扱い  子どもたちは、治療や自分の身体のこと、将来や学校のこと、友だちや家族のことなど、さまざまな不安を抱えて学級に通級してきます。かかわりが深まっていくと、自分の中にある不安をいろいろな形で表現するようになります。  大きな不安を抱えている子どもほど、自分の不安や恐れ、怒りなどの感情を表出することに抵抗を感じ、むしろそのような感情を「ないもの」として過ごそうとしている様子が見受けられます。また、心的なものが身体症状となって現れる、いわゆる心身症系の子どもたちが増えているという現実もあります。  これらの子どもたちに共通して見られることの一つに、「感情の不適切な扱い」があると考えています。感情の不適切な扱いは、さまざまな不適応行動につながっていきます。  病気療養児でなくとも、「感情(特に不快な感情)」の扱いは大切です。「子どもたちは自分の中にこの『不快な感情』が湧き上がると、自分自身にとって大きな危機となってしまうため、『防衛』をおこないます。そして、自分の中で起こっている痛みやつらさや不安や恐れなどを感じないようにして、生活をしている。(大河原 2004)」のです。  子どもたちが感情を表出し、表現することを通して、自分の中にどのような感情があり、その感情をどのように扱っていけばよいかということを考えたいと思います。 ◯感情表出の理解(小林 2009) 怒り:他者や周囲に変わってほしいという「願い」 悲しみ:苦境を分かち合ってほしい、助けてほしいという「訴え」 喜び:誰かと分かち合うことで加速される 恐怖や不安:問題があり、それを解消しなければならないという強い願い ◯教師の大切な4つのかかわり (小林 2009) 本人の好きなこと、得意なことを探りその面で付き合うようにする。 活躍の場を与える。 本人が安心していられる場所を作る。 不安や緊張や怒りや嫌悪などの不快な感情を言葉で表現できるようにする。 略歴 副島 賢和(そえじま まさかず) 昭和大学大学院保健医療学研究科 准教授 東京都公立小学校教諭として25年間勤務。内8年間品川区立清水台小学校「昭和大学病院内さいかち学級」担任。2014年4月より現職「昭和大学病院内さいかち学級」を担当。 学校心理士スパーバイザー。 小林正幸氏(東京学芸大学大学院教授)らと共に、「チーム仕事師」のメンバーとして「みどりの東北元気キャンプ」を行う。 大阪Tsurumiこどもホスピスアドバイザー。教育ボランティアの方々への研修等を行う。 ホスピタル・クラウンの活動もしており、「パッチ・アダムス」として有名なハンター・キャンベル・アダムス氏(米国)の活動に参加している。 著作に『あかはなそえじ先生のひとりじゃないよ』(教育ジャーナル選書/15年)『心が元気になる学校』(プレジデント社/16年)『学校でしかできない不登校支援と未然防止』(東洋館出版/09年)等。 ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ/09年)のモチーフとなる。11年には『プロフェッショナル仕事の流儀』(NHK総合)に出演。
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