抄録
目的 A病棟の先行研究において、「内服与薬場面での指差し呼称に対する看護師の意識と実施状況」についてのアンケート調査が行われた。結果、指差し呼称の必要性と効果についての意識は高いが、実施していない看護師が多いことが判明した。その背景には、経験年数や指差し呼称に対する知識や個人の過去に受けた教育歴の違いなどが考えられ、統一した実施方法と知識の提供が必要と考えた。そこで本研究では、指差し呼称の必要性と実施方法について勉強会を実施し、勉強会前後での看護師の意識と行動の変化を明らかにしたいと考えた。 対象と方法 A病棟看護師20名に対して、勉強会の前後で指差し呼称の必要性や実施状況のアンケート調査と、内服与薬場面での指差し呼称の他者チェックを実施した。 結果と考察 指差し呼称を「必要である」と回答したのは勉強会前が83.3%、勉強会後は91.8%であった。アンケートや勉強会の実施が指差し呼称に対する意識付けとなったと考えた。経験年数で比較すると、経験年数が高い群で指差し呼称を「実施している」「必要である」の回答が低く、長年の経験からの過信や自己の確認方法への固執、ルーチンワークに惰性が生じていることが推察された。他者チェックによる指差し呼称の実施割合に大きな変化はみられなかった。インシデント・アクシデント防止に指差し呼称が有効であると認識しているが行動に大きな変化がみられなかったのは、一回の勉強会では指差し呼称の効果や正しい実施方法についての理解が十分に得られなかったと推測された。指差し呼称の定着には継続的な働きかけが必要であると考えられた。