抄録
はじめに 約半年間軟膏・デブリートメント施行も悪化した当施設の褥瘡を有する利用者2名に陰圧創傷治療システム(以下、VAC)を用いて良好な結果が得られたので、当施設での褥瘡治療の新たな取り組みを報告する。 対象 A氏12歳 男性 横地分類:A1 大島分類:1 主病名:心肺停止蘇生後低酸素脳症 人工呼吸器管理 褥瘡部位:仙骨部 B氏 20歳 男性 横地分類:A1 大島分類:1 主病名:頭部外傷後後遺症 気管切開、日中座位保持装置に乗車 褥瘡部位:右大転子部(ポケット形成) 方法 使用機器:ActiV.A.C型、グラニューホーム使用 A氏 使用期間6/24〜7/21(4週間使用) B氏 使用期間7/28〜8/12(うち15日間使用) 結果・考察 褥瘡はDESIGN-Rにて、A氏は使用前12点→使用後10点、B氏は使用前21点→使用後29点(感染のため)であった。一方週2回のドレッシング剤交換では、両者とも回を追う毎に鮮紅色の良性肉芽形成が進んだ。また、VACの創縁を引き寄せる効果により、創の収縮が認められた。終了後は今迄効果がなかった軟膏処置が有効となり、治療期間の短縮が出来た。この結果から、今まで軟膏やドレッシング剤の処置では良性肉芽形成に至らず、デブリードメントが必要となった利用者に対し、VACは有効であったと考える。B氏については感染を疑い、VACの使用を15日間で終了した。閉鎖環境のため感染を疑う場合は継続か否かの検討が必要である。今回、VAC使用にあたり、利用者の活動を制限しない部位に装着すること、ドレープ部に発赤が生じたため、毎回異なる場所にドレープを貼付した。VACを利用した利用者は週2回のドレッシング剤の交換を行う以外に当施設での生活に影響はなく、良性肉芽形成がみられた。さらに頻回の創部の洗浄処置が不要となり、利用者の負担軽減が図れた。B氏の場合VAC装着中でも座位保持装置に乗車し療育活動に参加することが出来た。このことからも重症心身障害児者施設でのVAC使用は有用であると考える。