抄録
はじめに 実習は机上では学べない臨床場面を見学・体験できる貴重な場である。当施設では2007年より2校の理学療法学科の学生(以下、学生)の1週間の実習(検査測定実習、見学実習)を受け入れている。実習の学びを明らかにすることを目的に、10年間の学生の感想文を分析した。 対象と方法 2007〜2017年の10年間に実習を行った学生は27名である。このうち19名から提出された実習最終日の課題レポートである感想文を分析の対象とした。分析方法は、Steps for Coding and Theorization(SCAT)を一部改変した方法を用い、テキストデータの抽出、グループ化、言い換え、概念化、ストーリーラインの記述、理論記述の順で分析を行った。分析は実習に関わった当施設の理学療法士3名で行った。 結果 ストーリーラインは以下の通りである(本文中の〈〉はグループ化した言い換え、【 】は概念を意味する)。学生は初めて重症心身障害者が入所する施設で実習をし、実習前に抱いていた【イメージとのギャップ】を感じ、〈重症心身障害児者との出会いと戸惑い〉があった。実習指導者を介し、〈コミュニケーションがとれる人たちだという気づき〉から【重症心身障害児者の個性の理解】をし、【重症心身障害児者との関わり】を学んだ。また、〈身体を通した実体験の学び〉から【重症心身障害児者の身体の特徴への気づき】があり、【理学療法士による支援の深まり】を学んだ。 考察 学生は実習指導者を介することで重症心身障害児者への理解を深めていった。重症心身障害児者が発する、言語以外のさまざまな表現を、指導者との関わりから感じとった。また、自らの身体で実際に触れ、動かす体験を通じて、理学療法について学んだ。1週間という短い期間でも重症心身障害児者への理解と、重症心身障害の理学療法について学ぶことができたと考える。