抄録
研究目的 皮膚の乾燥が強い患者を対象に洗身方法を見直し、泡洗浄を行うことで、乾燥を軽減させスキンケアの有効性を検討する。 研究方法 皮膚の乾燥が強く、清潔ケアが全介助の重症心身障害を持つ男性患者5名を対象とした。毎朝天候、室温、湿度、皮膚状態、水分量を患者別に観察する。入浴日はPH値、ATP値も測定する。1クール目(ボディソープを泡立てて紙タオルで洗う)、2クール目(ボディソープを泡立てて素手で洗う)を実施した。 結果 1.前腕、上腕共にデータ間に統計学的な有意差を認めた。2.PH値は対照群、1、2クールすべてにおいて入浴前より入浴後の方がPH値は高くなり、アルカリ性に傾いていた。3.PH値の2クール目は入浴後PH値がアルカリ性に傾きにくかった。4.ATP値は洗浄前後でATP値が低くなり、汚れは落ちていた。 考察 1.水分量に有意差が出たのは少量の洗浄液で泡立てたことによる皮膚への影響と、素手で洗ったことで摩擦による皮膚への刺激が少なく、水分量を保つことができたのではないかと考えられる。2.PH値については、今回の研究ではすべての入浴方法でアルカリ性に傾いてしまった。これはA病棟の使用している洗浄液がアルカリ性(PH7.2)であったため、洗浄液により入浴後PH値がアルカリ性に傾いたと考えられる。3.2クール目で入浴前後のPH値の変化が少なかったことから素手で洗った方が洗浄成分が落ちやすかったためだと考えられる。 結論 泡を用いた洗身方法は素手で洗ったことで摩擦が軽減できた。また洗浄液の皮膚への残留が少なかったことからスキンケアに有効であった。 終わりに 本研究は各クールの比較まで至っていないため、今後洗身方法の比較を行っていく必要がある。