日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P-2-F25 重症心身障害者の口腔ケアにおけるアズレンスルフォン酸ナトリウム水和物製剤の効果
伊藤 智子
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 42 巻 2 号 p. 294

詳細
抄録
はじめに 重症心身障害児(者)は、先天的な障害として歯の萌出不全や形成異常がみられることや咀嚼、嚥下機能の低下により細菌繁殖を誘発しやすい口腔内環境となっている。また、抗てんかん薬などの長期に渡る内服による副作用として歯周病・歯肉増殖を引き起こすことが多い。今回、通常のブラッシングにアズレンスルフォン酸ナトリウム水和物製剤(以下、アズノール液)による洗浄を加えたケアの効果を報告する。 研究目的 重症心身障害児(者)の口腔ケアにアズノール液による洗浄を加えた口腔内環境の変化を明らかにする。 研究方法 期間:2016年7月〜8月  対象:重症心身障害児者病棟入院中で経口摂取可能な有歯顎者15名 方法:1日3回のブラッシング後に希釈したアズノール液にて洗浄した。就寝時前に歯肉の腫脹、出血、排膿を観察、口腔水分計ムーカスを使用し口腔内水分量を測定した。口腔内PHはオーラルペーパーテスト紙にて測定した。それぞれの項目は症状なしを0、症状のレベル別に1〜3とし1週間毎に比較した。 倫理的配慮:研究対象者の保護者に本研究の趣旨を説明し同意を得た。 結果・考察 洗浄開始前と比較すると、歯肉腫脹は15名から6名、歯肉出血は13名から1名、歯肉排膿は7名から1名とそれぞれの症状が減少した。また、口腔内PHの平均値は6.0から7.0へ改善した。口腔内水分量が測定できた対象では8名全員が正常値となった。重症心身障害児(者)の口腔内は、さまざまな要因から炎症が起きやすい。粘膜そのものから炎症を起こすと酸性に傾きPHが低下する。ブラッシングにより歯垢を取り除いた後、アルカリ性洗口剤であるアズノール液を使用したことで酸を中和しPHの正常値につながり、炎症組織に対する直接的な局所作用により炎症症状が軽減したものと考える。 結論 ブラッシング後のアズノール液による洗浄は、重症心身障害児(者)に効果的であり唾液の酸を中和しPH上昇、歯肉炎・歯肉腫脹の改善につながる。
著者関連情報
© 2017 日本重症心身障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top