抄録
目的 慢性便秘と腹部膨満が著明な重症心身障害児(者)に、用手微振動と水溶性食物繊維を併用することにより自然排便・排ガスを促すことができる。 方法 対象:50歳代男性 大島分類:1 日常生活自立度:C2 経管栄養の実施診断名:ダウン症候群 てんかん 医師の指示で排便がない日に大腸刺激性下剤を投与し、3日間排便がない場合や腹部膨満時にマッサージや浣腸、肛門ブジーを実施している。 研究期間:平成27年4月〜平成29年5月 方法:水溶性食物繊維5gを1日2回投与した。用手微振動は、オムツ交換、体位変換時や腹部膨満著明時に腰椎周囲、大殿筋下部・中央部、大転子部を1回につき約1分程度実施。排便回数、浣腸・肛門ブジーの頻度についてのデータを比較、評価する。 倫理的配慮 個人が特定できないように匿名性を厳守し、データの保管を適切に行うことを家族に説明し承諾を得た。 結果・考察 平成27年度は、3日間以上排便のない回数が4〜5回/月であった。平成28年度は、排便の頻度が1〜2回/月となり、1回/2日は自然排便となった。6〜7回/月実施していた浣腸も3〜4回/月に減少した。これは、用手微振動と水溶性食物繊維の併用で、腸管蠕動運動が促進され自然排便の増加、浣腸回数の減少につながったと考える。肛門ブジーは10回/月から2回/月に減少し、体位変換時に自然排ガスがみられるようになった。自然排ガスが増えたことで腹部膨満による不快や浣腸、特に肛門ブジーによる機械的刺激、腸損傷のリスクも少なくなり患者の負担軽減につながったと考える。また、用手微振動は高齢化した重症心身障害児(者)にも手掌を身体に添わせることができるため、患者が拒否せずスムーズに実施できたことで、よい効果が現れたのだと考える。 結論 用手微振動と水溶性食物繊維の併用により、患者の不快や負担となる浣腸の回数、肛門ブジーの回数が減少し、自然排ガスの促進につながった。