抄録
はじめに 超重症児者の支援において、職員は環境の変化が超重症児者に及ぼす影響に不安を持つ場合がある。その不安は利用者の生活の抑制要因として支援に影響し、生活の質に影響する。事例を通し、職員の不安要因と関連性を明らかにしたので報告する。 目的 超重症児Bさんの修学旅行参加に対する職員の不安要因を分析し、不安がどのように支援に影響したのかを明らかにする。 方法 A重症心身障害児者施設の看護職・福祉職30名に調査表を配布、記述内容をカテゴリー化し、分析・検討した。 結果・考察 Bさんの修学旅行に対し、職員の95.5%が「不安がある」と回答した。同様に、日頃の超重症児者の施設外での支援に対し、「不安を感じたことがある」との回答は9割となった。その要因は【常に医療を必要とする状態】【医療環境が整っていない】【社会経験の少なさ】【交通障害や自然災害】【本人が意思決定できない】【社会資源や社会環境】の6つから成り、それらは相互的関連性を有し、施設と地域の要因に分類された。最も重要な要因は【常に医療を必要とする状態】である超重症児の医療依存度の高さである。これは他の不安要因を引き出し、外出に消極的になり、施設内の生活に留まらせる結果となる。これは外出にかぎらず、医療依存度の高い超重症児の普段の支援にも影響し、遊びや活動などの支援が消極的なものになると推測される。また、施設職員は施設外をリスクの多い環境と認識し、超重症児が積極的に地域社会に出ていくことをあまりイメージできていない。施設内で生じる不安が軽減または解消されるなどの体験を通し、施設外での児の生活をイメージした支援に広がっていくと考える。 終わりに 職員の不安が超重症児者の種々の活動を制限することとなり、互いに経験する機会を少なくしている。不安要因を明確にし、支援することで利用者の生活を豊かにすることにつながる。