日本重症心身障害学会誌
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O-1-H19 胸郭変形のある重症心身障害児(者)の胸部聴診部位の検討
後藤 正志郎石井 涼子
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2018 年 43 巻 2 号 p. 278

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抄録

はじめに 重症心身障害児(者)は、脊椎変形との関連で拘束性換気障害を引き起こしやすく、人工呼吸器の装着や、唾液の流れ込みなどで肺炎や無気肺を起こしやすい状態にある。そのため、聴診が重要であるが、重症児(者)は脊椎変形などから肺野が正常な位置ではないため、聴診に困難を感じる。今回、胸郭変形を呈する重症児(者)の肺野をイメージして聴診できるツールを作成し、その活用を検討した。 目的 重症児(者)の上半身の写真にレントゲン画像を重ね、肺の位置を示したツールが聴診に活用できるかを検討する。 対象と方法 対象は、重症児(者)病棟の看護師33名。データ収集方法として、同意を得た入院患者2名の上半身にレントゲン画像を重ねた表を作成した。そして、それぞれの画像を同間隔で区分わけした調査用紙を作成した。看護師にはレントゲン画像のない表と画像がある表の調査用紙に時期を変えて聴診部位を選択してもらった。その結果から聴診部位の変化を比較した。 結果 A氏B氏のレントゲン画像なしとありでは、同じような傾向で聴診部位の変化がみられた。胸部では上葉と中葉のあたりは、看護師の聴診部位の変化はほとんどなかった。背部では、画像なしよりも画像ありのほうが、レントゲン上の肺野に聴診器をあてる部位を選ぶことができていた。また、横隔膜の境界の聴診部位は、画像ありのほうが正確に聴診部位を選ぶことができていた。 結論 1.肺の上肺野・中肺野は、写真のみで肺の位置を捉えることができていた。2.自力での体位変換が困難な患者の背部は、視覚的に肺野を捉えにくいため、レントゲン画像を用いることで正確な肺の位置を捉えることができた。3.変形により肺やその他の臓器に個別の特徴がある部位は、レントゲン画像があることでより細かな部位を捉えることができた。

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© 2018 日本重症心身障害学会
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