日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
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一般演題
O-1-H21 重度脳性麻痺を有する乳幼児の母親が子どもの痛みに対応するプロセス
河俣 あゆみ
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2018 年 43 巻 2 号 p. 279

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抄録
はじめに 重度の脳性麻痺を有する子どもは、麻痺や筋緊張に伴う不快症状をもっているとされるが、言語的に症状を訴えることが出来ないことが多い。中でも痛みについてLiptakら(2001)やHoulihan(2004)らによれば、痛みは障害のレベルが関連しており、Gross Motor Functional Classification System(GMFCS)の3以上の子どもの親は、38%に子どもに痛みがあると感じ、11%に毎日痛みがあると感じていたと報告されている。しかし、日本においては脳性麻痺の子どもの痛みを親がどのように捉えているのか明らかにされていない。そこで親が子どものサインを捉え、認知し、痛みに対応するプロセスを明らかにすることで支援を見出すことを目的に研究を行った。 方法 半構成的面接による質的記研究を行った。対象者は6歳以下で重度脳性麻痺を有し言語的表現が困難な子どもとその母親8名とした。分析はインタビュー内容を録音、逐語録とし、母親が子どものサインとして捉えている内容、痛みに関して語った内容を抽出し帰納的に分析を行った。 結果 8名の母親全員が子どもに痛みがあると語った。母親が子どもの痛みを認知し、対応するためには体験に基づくプロセスが必要であり、子どもがサインを示す、母親が子どものサインを認知する、快な状況で示す子どものサインを認知する、不快な状況で示す子どものサインを認知する、不快な原因を探り対応する、不快なサインが消失したら要因とサインを関連付けるが不快なサインが消失しない場合は痛みを疑う、痛みの原因を探り状況と関連付ける、痛みの要因に応じた対応をする、サインが消失したら痛みが出現した状況とサインを関連付けるであった。また、これらには母子相互作用が重要な要因となっていた。 考察 母子相互作用を促進しながら、子ども自身のサインを出せる力や子どものサインを感じ取る母親の力を引き出すことが、子どもの痛みを緩和する支援となりうる。
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© 2018 日本重症心身障害学会
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