日本重症心身障害学会誌
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O-1-F03 重症者の腸閉塞症に対する腹腔鏡下手術の後方視的検討
新美 教弘田中 修一
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2018 年 43 巻 2 号 p. 282

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抄録

目的 胃瘻や胃噴門形成術など開腹手術歴を認める重症心身障害者(以下、重症者)には、術後に腸管癒着や屈曲捻転が原因で腸閉塞症を発症することがある。また、開腹歴がない重症者の中には鼓腸を伴った原因不明の腸閉塞症状を反復する症例を認める。これらの重症者に対し腹腔鏡下癒着剥離術の有効性を評価することを目的とした。  対象と方法 対象は腹腔鏡下癒着剥離術を施行した9例(2回歴1例)。カルテから検討項目を抽出し後方視的に検討した。  結果 年齢の中央値44歳(12〜55歳)だった。開腹歴を認めた症例は8例であった。すべて、腸閉塞を保存的に治療してから待機的に腹腔鏡手術を施行した。手術時間の中央値129分(75分から217分)。挿入ポート数は3ポートが7例、4ポートが2例であった。腹腔鏡下手術を完遂した症例は5例だった。拡張した消化管ガスが視野を妨げ、腹腔鏡操作を中止した症例は1例だった。その症例を含め4例は臍のポート創か癒着腸管近傍の腹壁を小開腹した。術式は単純癒着剥離のみ7例、捻転解除が1例。残り1例は腸閉塞の原因が小腸の器質的狭窄であったので、腸管切除吻合を施行した。短期的術後合併症は1例で、術後3日目に剥離部の横行結腸の穿孔のために緊急開腹術を行った。全例が軽快退院し、入院期間の中央値は19日(13〜50日)だった。退院後に腹部手術を施行したのは2例で、その内訳は開腹胆摘が1例、再腸閉塞のため腹腔鏡手術を施行した1例だった。遠隔期に他病死(癌死)した1例を除き、8例は生存していた。  結論 1.重症者の腸閉塞に対し、待機的に腹腔鏡手術を施行することは原因の特定と治療に有用であった。2.開腹術に移行する場合でも臍や原因部位直下の小開腹で対応可能であった。3腸管ガスが視野を妨げたのは1例のみで、鼓腸がある重症者でも腹腔鏡操作は可能であった。

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© 2018 日本重症心身障害学会
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