日本重症心身障害学会誌
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O-1-F04 重症心身障害者における多剤併用は腎機能低下のリスクの1つになり得る
山田 誠及川 巧山田 直人
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2018 年 43 巻 2 号 p. 283

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抄録
背景 高齢者等における多剤併用は、様々な有害事象の発生や薬剤費増大で社会問題化している。重症心身障害者(以下、重症者)においては、症例の重症化・高齢化に伴い多剤併用を余儀なくされる現状がある。高齢者の多剤併用に関する研究報告は最近多く示されるようになったが、重症者についてはほとんど報告されていない。腎臓は薬剤代謝物の排泄に寄与することから、多剤併用の腎機能への影響は容易に想像できるが、重症者・高齢者を通しても併用薬剤数と腎機能との関連を検討した報告は、全くないのが現状である。 目的 多剤併用による腎機能へ及ぼす影響を、当園長期入所者の血液検査値から検討することを目的とした。 方法 緑成会整育園に長期入所中の重症者のうち、2017年7月〜2018年1月の期間において血清クレアチニン値を含む血液検査を実施された20〜40歳代の利用者で、かつ内服薬のみでの加療を受けていた36名(男性17名、女性19名)を対象とした。腎機能の指標は推算糸球体濾過量(以下、eGFR)を採用し、横軸に内服薬剤数、縦軸にeGFRをとった分散図から、最小二乗法にて相関係数を算出した。 結果 性別や年代による内服薬剤またはeGFRに有意差を認めなかったことから、すべてのデータを一元的に扱うこととした。内服薬剤数の増加に伴いeGFRは低下傾向を示した。 考察 20〜40歳代のような一般的に生理的な腎機能低下を認めない集団における腎機能低下の主な原因は、多剤併用にある可能性が考えられた。今後は、重症者で問題となる骨密度低下や貧血など、具体的な事象と腎機能との関連性を調査したい。 結語 重症者における多剤併用は腎機能低下のリスクの1つになり得る。
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© 2018 日本重症心身障害学会
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