日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
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O-2-H02 市販ソフトを使用した脳波測定結果のデータベース作成と1症例の経過報告
石島 亜純久保田 雅紀渡辺 美夏久保田 文雄竹内 東光野田 真一郎
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2018 年 43 巻 2 号 p. 305

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抄録
目的 当センターは重症心身障害児(者)が長期入院している。その多くはてんかん患者であり、治療目的で脳波測定を行い、長期間の保管が問題であった。そこで市販ソフトを使用し脳波測定結果のデータベースを作成した。さらに今回作成したデータベースを用いて、長期入院中の15番染色体異常のInv dup(15)の患者の経過を報告する。 方法 データベースは市販ソフトのFileMaker® Pro 15を用いた。患者氏名、測定日、脳波測定結果としててんかん専門医の判読結果、突発性異常波の焦点部位、脳波記録の一部をスキャンした画像を登録し、患者ごとに時系列で一覧できるようにした。対象者は、ご家族に研究内容について説明し同意を得た。 症例 29歳女性。47, XX, +mar. ish idic(15)(q11.2)。症候性全般てんかん。強直発作、非定型欠神発作、脱力発作。3歳7か月てんかん発症。歩行のふらつき、精神運動発達遅滞、小頭症を伴っていた。乳幼児期から左後頭優位の棘波、棘徐波複合がみられ、全般性の多棘波などへ増悪していった。11歳で当センター入院。脳波記録では多棘徐波複合およびrapid rhythm頻発と発作時に棘律動が観察されていた。14歳時に両上肢拳上する強直発作が重積した。16歳ごろから発作回数は減少、多棘徐波複合も漸減した。28歳時の脳波では突発性異常波はみられなかった。 結果・考察 データベースの作成で患者ごとに経時的に脳波の検討ができるようになった。その結果、抗てんかん薬や年齢による変化などを検討し、てんかん治療に役立てることができるのではないかと考える。また、当症例は幼児期にLennox−Gastaut症候群と診断された。改めて長期的な脳波経過をみると、広汎性緩徐性棘徐波やrapid rhythmなどの特徴的所見が最近はみられず、発作回数も減少していることがわかった。幼児期の脳波や小頭症、歩行のふらつき等の所見からAngelman症候群の可能性も考えられる。
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© 2018 日本重症心身障害学会
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