抄録
目的
重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))には、健康上や生活環境が要因と考えられる睡眠の問題が多く存在する。重症児(者)にとって睡眠は、日中の療育活動や生活の質、発達面に関わる重要な要素であり、睡眠・覚醒リズム獲得に向けた援助は必要不可欠である。今回、睡眠障害を有する重症児(者)の生活に日光浴を取り入れ、日光浴が睡眠・覚醒リズムに与える効果を、体温リズムおよび睡眠状況から検証した。
方法
対象者17名について10時〜10時半の間の5分間、2,500ルクス以上の屋外で日光浴を行った。研究期間のうち、6月下旬から9月下旬の晴れた日を第2期(日光浴介入期)、その前後を第1期(日光浴介入前非介入期)、第3期(日光浴介入後非介入期)とし比較した。体温の解析には、介入条件×時刻の2要因分散分析を実施した。また、各期の時刻の効果についてFriedman検定を実施し、その上で各時刻の間でwilcoxon符号付順位和検定を実施した。p値が0.01未満を有意差ありとした。夜間の覚醒状況の解析は、第1期〜第3期それぞれでt検定を実施し、p値が0.05未満を有意差ありとした。
結果
日光浴介入による体温リズムの変化として、第2期にのみ、日光浴介入直後の13時に1日の高体温のピークとなった。また、第3期でも13時の体温上昇がみられた。睡眠状況について、第2期の夜間の覚醒状況の合計得点が第1期、第3期と比較して有意に減少した。第3期では、13時の体温上昇があったにもかかわらず夜間の覚醒状況との相関性はなかった。このことから、夜間の睡眠には、体温リズムを整えることに加えて、日光浴等の介入による日中の身体的・精神的・社会的活動の量や質が影響することが示唆された。
結論
1.日光浴は重症児(者)の体温リズムに影響を与え、特に日中の体温を上昇させる効果があった。
2.日光浴は重症児(者)の夜間の睡眠時間の増加に効果があった。