抄録
はじめに
重症心身障害者(以下、重症者)は体温調整が未熟で気温の変化に左右されやすい。また自ら姿勢変換が困難で同一姿勢になりやすく、背臥位では背中に熱がこもりやすい。当センターには気温によって体温が上がり、ストレスで筋緊張が高まったり、てんかん発作を起こすなどの身体症状を示す方がいる。日常使用するマットの検討として、通気性に優れるブレスエアーマットレスを使用する機会を得た。今回、重症者3名に対しサーモグラフィーを用いて背部皮膚温度を計測し、通常マットレスとの違いについて比較し、ブレスエアーマットレスが重症者にとって有用かを検討した。
対象
夏季に体温上昇により困り感のある、当センター利用中の成人重症者3名(男性2名、女性1名)
方法
通常利用マットレス(エアレックスマット)とブレスエアーマットレス(FOUR SEASONS EX2)にそれぞれ30分背臥位で過ごし、その前後のバイタルサイン(体温・脈拍・酸素飽和度)とサーモグラフィー(サーモギア®G120:NEC/Avio)で背部皮膚温度を計測し比較した。対象者は同一着衣で覚醒した状況のときに測定した。また、病院内の遮光できる部屋で無風状態であることを統一条件とした。
結果・考察
3名中2名は通常利用マットレスでは背部皮膚温度が上昇したが、ブレスエアーマットレスでは背部皮膚温度は同一もしくは低下した。体温調整において体内の熱が放散されることは重要である。ブレスエアーマットレスで体温上昇はみられたが、背部皮膚温度へ影響しにくかったことから、ブレスエアーマットレスは重症者にとっても熱の放散がしやすいマットレスと考えられた。
まとめ
ブレスエアーマットレスの方が、熱の放散がしやすいため、臥位で過ごす重症者の体調や生活の質を高める可能性があることが考えられた。今回は対象者数が少なかったため、今後も対象者数を増やし重ねて検討していきたい。