抄録
はじめに
ホスピタル・プレイ・スペシャリストは、医療ケアを必要とする子どもに「遊びの力」を届け、健やかな成長と発達を支える専門職である。当協会では、2016年より医療ケアがあるために自宅にこもりがちな子どもに遊びを届ける在宅での遊び支援事業に取り組んできた。5歳男児の事例を通して、子どもや家族にみられた変化から、在宅遊び支援の意義を考える。
目的
医療ケアを必要とする子どもに対し自宅に赴き遊びを届けることで、子どもの健やかな成長・発達を支える。
方法
2016年10月から月2回、10時から11時の1時間
結果
1.子どもと遊びがつながった。
2.遊びを通して子どもと家族がつながった。
3.遊びを通して子どもは医療とつながった。
4.『挑戦する勇気』が強まった。
5.子どもの変化に伴って、家族にも変化がみられた。
考察
医療ケアが多く遊びと触れるチャンスが少ない在宅で過ごす子どもにとって、在宅での遊び支援は、いろいろな遊びが経験でき興味の幅も広がる。「楽しい」「うれしい」「驚き」等の感情の表出にも変化がみられた。遊びの中で挑戦するという経験は、今後困難なことに直面したとき、「我慢」や「諦め」ではなく、『挑戦する勇気』になると考える。
自宅でできる遊びを示すことで、医療やリハビリではない、遊びを通したあたたかな親子関係をもたらす。「生まれて今まで医療ケアに追われ、医療と向き合うことで精いっぱいだった。子育てがやっと始まった」と話された母の言葉が印象的であった。医療においても、何をされるかわからないという不安や日々苦痛を感じている子どもは、HPSの遊びを通して医療とつながることで、治療の意味を理解し、治療と向き合う心の準備ができる。それを乗り越えたとき、自信とかけがえのない自分を感じることができると考える。