抄録
はじめに
皮膚の生理機能の低下による皮膚トラブルを改善するには、洗浄と保湿が重要であることが多くの先行研究において報告されている。しかし、超重症児(者)の唾液の皮膚接触に焦点を当てた報告はない。今回、繰り返す皮膚トラブルに対し、エビデンスに基づいたケアの提供を行ったことで、皮膚状態が改善された事例について報告する。
事例報告
A氏は大島分類1、重症児スコア37点の20代女性で、四肢や頸部の強度の拘縮や重度の嚥下障害があり、口腔からの唾液の持続的な吸引や、睡眠時には人工呼吸器の補助が必要である。一日をほぼベッド上で生活し、頸部の拘縮による回旋困難があるため、右耳の除圧のため中央部をくり抜いたスポンジ枕を使用してきたが、口元から溢れ出た唾液がスポンジ枕や右顔面に常時接触していた。そのため、一日に何度か清拭を行っても清潔の保持が困難な状況であり、右顔面に常時湿疹があり、触れると不快表情が見られていた。そこで、今回ケアの方法を見直し、エビデンスに基づいたスキンケアと唾液のふき取り方法の手技の統一を図った。同時に耳介の除圧枕の見直しと右顔面を接触物から解放する時間を日常生活に取り入れ、皮膚の生理機能を回復するための取り組みを行った。その結果、耳介周辺の発赤は解消されなかったが、介入前に右顔面に発生していた湿疹や膿痂疹は5週目にすべて消失した。
考察
今回の症例から、皮膚に対しての悪条件が減り、皮膚生理機能が正常に働くようになったため皮膚トラブルが改善したことが考えられる。頸部の拘縮や流延のある超重症児者が正常な皮膚状態を保つためには適切な頻度でケアを見直すことと、対象者のアセスメントに基づいた根拠のあるケアの提供が必要であるということが明確になった。