抄録
はじめに
われわれは、第43回日本重症心身障害学会学術集会でPfeiffer症候群2型の3歳男児に対する移動支援の取り組みについて発表した(迫ら、2017)。その後の変化ついて報告する。
事例紹介
FGFR2遺伝子変異を認めたPfeiffer症候群2型の4歳7か月の男児。横地分類はA1。新生児期より水頭症、四つ葉様頭蓋、高度難聴があり、VPシャント術、気管切開、胃瘻造設術を受け3歳1か月時に当施設へ入所となった。3歳6か月時には背臥位で30度傾斜した手作り移動具での移動を経験し、生活環境が変わり笑顔が増えた。今回「もっと身体を起こし活動の幅を広げてあげたい」というスタッフの意見を元にGoal Attainment Scaling(以下、GAS)で移動・遊び・対人関係それぞれのゴール達成スケールを作成し、頭部・体幹を起こした抗重力活動を通しての介入前後の値を比較した。
方法
理学療法は週2回、40分、2単位で実施。介入前のGASの移動・遊び・対人関係のベースラインのT値は37.6であった。1週目;介助下で体幹を60度起こした端座位練習を実施。3か月目以降;SRCウォーカーを使った全介助での移動練習、端座位での机上活動を行った。生活棟スタッフは立て抱きでの関わりや介助での滑り台遊びを実施した。
結果
1年後、GASのT値は63.3へ向上した。座位は体幹を80度起こし休憩を挟んで6時間可能となり座位保持装置を作成・生活に導入した。座位で玩具の持ち替えや車で遊ぶ様子がみられ、促しにより他者の手にタッチすることができるようになった。また歩行器を使って生活棟内を自由に移動し目標物を触って楽しむなど感情表現が豊かになった。
考察
新田(2017)は「姿勢制御は視野、追視制御、認知面に深く関連し、コミュニケーション学習に対する影響が大きい」と述べている。今回、頭部・体幹を起こした抗重力位での活動が、他者や物と同じ目線となる機会を増やす結果となり、能動的な移動能力や対人関係の向上につながったと考える。