2018 年 43 巻 3 号 p. 419-424
われわれは、気管切開術後症例に喉頭気管分離術を施行する際に、気管切開孔 (以下、気切孔) を切除する術式(以下、切除法)と温存する術式(以下、温存法)を行ってきた。2009年6月から2016年7月までの間に喉頭気管分離術を施行した気管切開術後症例17例を対象に、切除法と温存法の有用性を後方視的に検討した。切除法10例、温存法7例で、切除法の6例、温存法の1例に気管食道吻合を行った。手術時間は切除法269±62分、温存法160±50分、出血量は切除法120±55g、温存法31±45gであった。切除法では術後に気管腕頭動脈瘻1例、無気肺1例、温存法では縫合不全1例、気切孔皮膚狭窄1例を認めた。温存法は、気切部の剥離が不要で剥離範囲も狭いことから、手術時間が短く、出血量も少なかった。また、肺側気管の剥離操作や気管偏位がなく、気管腕頭動脈瘻の発生リスクは気管切開術と同等に低いと考えられた。以上より、気切孔を温存する喉頭気管分離術は、症例を選べば、有用な術式と考えられた。