抄録
はじめに
高齢の重症心身障害者(以下、重症者)の症例において、誤嚥性肺炎を起こし経口摂取のみでの栄養管理困難となったが、胃瘻造設後経管栄養を離脱し経口摂取を再開できた1例を経験したので報告する。
症例
75歳女性、疾患名、脳性麻痺・精神遅滞・てんかん、大島分類1。食べる意欲が強く、食事中「おいしい」などの発語がある。57歳入所の際は自力摂取できていたが、71歳で誤嚥性肺炎を起こし、全介助となった。その後、唾液による貯留性喘鳴やむせが多くなり経鼻経管栄養と経口摂取を併用。73歳で胃瘻造設するが段階を経て3食経口摂取となる。
経過
唾液や痰の貯留が増えたことに対して腹臥位を開始、流涎が多いためベッド上では両側臥位のポジショニングを徹底した。座位保持装置の角度は、唾液が口や咽頭に溜まらないよう90度を保持した。食事介助者を看護師のみに限定し、状態をみながら無理せず行い、本人専用の小さめのスプーンを使用して一口量を統一した。上気道感染時は、一時的に経管栄養に切り替え、必要時は鼻腔からの持続吸引や吸入を行うなど早期に対応した。
考察
重症者は様々な合併症が嚥下機能低下に関連する。呼吸障害もその要因の一つであり、日頃からの対応が重要となる。食事介助方法としては、食具を統一し、さらに、安全性を考慮すると介助者を限定することも必要なのではないかと考える。体調不良時には、対応を早期に判断し適切に行うことで全身状態の改善を図ることができ、経口摂取を再開することに繋がった。これらのアプローチにより、経口摂取を継続できていると考える。
おわりに
今後、高齢化が進むうえで経口摂取困難な重症者は増えてくる。その中で、経管栄養や胃瘻造設だけに頼るのではなく、どうしたら経口摂取が継続できるのかを考え、本人の思いを叶えられるチームアプローチ、個別的支援を実践していきたい。
申告すべきCOIはない。