抄録
はじめに
重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))は、嚥下機能障害や口唇閉鎖が難しく、流涎が多いために皮膚トラブルや分泌物過多などより呼吸障害を起こしやすい。また衣類の汚染により、他者からの見た目や強い臭気など、清潔面での問題もある。ロートエキスは慢性胃炎などの治療に用いられるが、流涎や分泌物過多に効果があるため、重症児(者)に投与することで、本人の日常生活や介護者にどのような変化をもたらすか調査した。
対象と方法
流涎・分泌物過多により、生活への支障や呼吸障害をもたらしている入所中の重症児(者)27例。医師より介護者に効果と予測される副作用を説明し、同意が得られた利用者にロートエキスを投与し、介護者にその効果と副作用の評価を調査した。開始時年齢は3歳〜51歳。大島分類1:20例、2:7例。経口摂取14例、経管栄養13例。気管切開10例。
結果
27例中26例で流涎・分泌物の減少を認めた。洋服の汚染が減少したことで強い臭気がなくなり、複数回の着替えも不要となったため、生活介護業務の減少につながった。また以前は利用者の周囲に流涎の水たまりができるほどであったが、現在は環境整備に時間を要することがなくなった。また13例で頻回なむせこみの消失や、吸引回数が減少し、看護業務を軽減することができた。2例は胃残の増加で投与中止となった。
考察と結論
流涎や分泌物過多は重症児(者)が生活する上で、本人にも介護者にも大きな問題となっている。今回ロートエキスの分泌物抑制効果により流涎や吸引回数が減少したことで、看護・生活介護業務の軽減が得られた。業務の軽減は介護者の時間的・精神的余裕ももたらし、日中活動の充実や個別ケアの時間を持つことができるようになった。また流涎・分泌物が減少することは、本人の清潔面を改善し、呼吸状態の改善も得られた。
申告すべきCOIはない。