抄録
目的
姿勢を保持するには体幹筋の役割が重要であり、脳性麻痺児者において体幹筋の筋厚は運動機能と関連しているとされている。また一般人を対象とした報告では骨密度と筋力との間には関連があることが報告されている。しかし運動機能と筋断面積との関係や、脳性麻痺児者の筋断面積と骨強度の関係につての報告はみられない。よって脳性麻痺児者を対象とし、MDCTから体幹筋(腰部脊柱起立筋)断面積と骨密度の関係について運動機能別に検討した。
方法
対象は当院に入院する脳性麻痺児者15名(男性8名、女性7名平均年齢36.3±17.9歳、)。運動機能別に独歩可能をⅠ群(5名)、座位保持可能をⅡ群(5名)、寝たきりをⅢ群(5名)に分けた。筋断面積は、MDCTのMPR面像よりL4椎体中央の水平断面より左右の脊柱起立筋の断面積(ESM)を測定した。またEMSをTh1上縁からL5下縁までの距離の2乗で除し補正値とした。骨密度は踵骨で測定した、同年齢比較の値(AM)を用いた。
ESMおよびAMのⅠ、Ⅱ、Ⅲ群間での関係をWillcoxonの符号順位和検定で、ESMとAMのⅠ、Ⅱ、Ⅲ群間それぞれでの関係をSpearmanの順位相関係数で検討した。
結果
ESMおよびAMのⅠ、Ⅱ、Ⅲ群間での関係は、どちらもⅠ群とⅢ群に有意差を認めた。ESMとAMの関係は、Ⅰ群では強い正の相関が、Ⅱ群では低い正の相関が認められた。
考察
今回の結果から歩行可能群では、体幹筋の筋断面積が運動機能の指標となり得ることが示唆されたが、座位自立レベルや寝たきりでは通常期待される筋や骨の成長発達が得られにくいことが示唆された。
まとめ
脳性麻痺患者の体幹筋および骨密度について運動機能別に検討した。今後データ数を増やし年齢別や脊柱変形との関係性なども検討し、骨折や変形予防などに役立てるようにしていきたい。
申告すべきCOIはない。