日本重症心身障害学会誌
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Print ISSN : 1343-1439
自主シンポジウム2:重症心身障害児(者)に対する多面的理学療法アプローチの試み
重症心身障害児(者)に対する多面的理学療法アプローチの試み
花井 丈夫
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2020 年 45 巻 1 号 p. 101

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抄録

重症心身障害という障害像は、それを定義するのは知的障害と運動障害という2つの尺度である。しかし、現実の支援においては、これら定義された障害に、合併症や随伴症状など、また成長発達の中で影響し合い複雑に変容した多様な機能障害と、それに伴う活動や参加の制限が最も厳しい障害像である。児玉は、「理学療法を中心とした訓練の課題は、こうした将来にわたる変化を見通して、できるだけ早期から体系的な働きかけを続け、常に家族や介護スタッフと協力して悪循環を防ぎ、より快適な機能を維持させることであろう。」1)と述べている。重症心身障害の理学療法は、障害のある当事者の利益を最大にした多様で多面的なアプローチを常に開発していかなくてはならない。そして、開発したアプローチは多くに紹介し、多くで試みることによって、効果のエビデンスレベルが確かめられると考える。 今回の自主シンポジウムでは、2つの提案を行った。一つ目は、金子断行氏が、これまでは経鼻咽頭エアウェイや下顎挙上などに頼りがちな上気道通過障害に対する新たなアプローチの具体的な提案をした。二つ目は、平井孝明氏が、前述したように、運動機能の発達障害が、呼吸、循環、摂食嚥下や消化吸収機能に影響し起きる二次障害のメカニズムを再度整理確認し、それらにどう対応したらよいかを臨床経験から提案した。 なお、これらの提案は、実施する理学療法士の技量経験によって効果が異なり、持続効果も含め頻度などをどうマネージメントするかなどの課題は別にあるが、障害の機能面において直接支援できる理学療法を再認識いただき、理学療法士にこれらを行う機会がより提供されることを願っての起案である。

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