日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
論策
在宅で生活する重症心身障害児(者)の死をめぐる母親の体験と社会的課題
久保 恭子坂口 由紀子宍戸 路佳
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2020 年 45 巻 1 号 p. 175-180

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抄録

本研究の目的は、在宅で生活する重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の死をめぐる母親の体験と社会的課題を明らかにし、今後の看護のあり方を検討することである。研究方法は子どもを亡くした母親6名に面接調査を行い、質的帰納的に分析した。対象者の児の在宅生活は5年以上で、長期間多くの支援を受け、自宅で生活ができたケースである。在宅で生活する重症児(者)の死をめぐる母親の体験は<子どもの死へのアンビバレントな感情・恐怖><孤立感・孤独感><長年の療養・介護生活のリズムからの脱出><ワーク・ロスと就職活動><社会への恩返し・自己実現>であり、先行研究の母親のグリーフケアの過程を支持するものであった。本調査の新たな知見は、母親は<ワーク・ロスと就職活動>という社会的課題をもち、経済的な困窮への不安、家計や母親の老後の資金のために就職活動をするケースがみられた。障害児を持つ母親のワーク・ロスに関する研究は少なく、今後、重症児(者)の家庭の経済面も考慮した支援を検討する必要がある。

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© 2020 日本重症心身障害学会
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