2020 年 45 巻 3 号 p. 241-246
重症心身障害児(者)における高齢発症のてんかんを2例経験した。1例目は発症時72歳の大島分類15の男性で、特に誘因なく20秒の強直間代けいれんを起こした。経過観察していたが、9か月後から、しばしば口をぺちゃぺちゃする自動症や、発作後のもうろう状態を伴う数分の意識減損発作がみられるようになった。レベチラセタム500 mg/日で治療を開始し、1000 mg/日で発作の抑制が可能となった。2例目は発症時73歳の大島分類1の女性で、舌を前に出すような動きと頻脈を伴った上肢と上眼瞼の律動的なぴくつきが断続的に出現した。クロバザムで治療を開始し、15 mg/日で発作は一度鎮静したが、2か月後から、時に頻脈や眼球固定を伴う、数分間の上肢・眼瞼のぴくつきが頻発するようになった。クロバザムを増量しても効果がなく、レベチラセタムへ置換した。500 mg/日から開始し、1000 mg/日で発作抑制効果が得られた。2例とも覚醒度や認知機能の低下といった副作用はみられなかった。今後、重症心身障害者においても高齢者てんかんの発症に留意する必要がある。また、その治療には副作用や薬剤間の相互作用が少ない新規抗てんかん薬を用いるのが望ましい。