2020 年 45 巻 3 号 p. 257-262
Wolf-Hirschhorn症候群は重度の精神発達遅滞、難治性てんかんなどを合併し、予後はてんかんや心疾患による。近年、重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の高齢化により、死亡原因として悪性腫瘍の頻度が増えている。症例は、大島分類1の40歳男性。突然不機嫌や啼泣を認め、発熱も認めたので受診。39歳時にバレット食道に罹患しており、上部消化管内視鏡検査を行ったところ、食道部に隆起性病変を認め神経内分泌癌と診断した。神経内分泌癌は予後不良であり、消化器内科医も含め家族と話し合いを行った結果、緩和ケアを希望。緩和ケアチームを早期に発足し、痛み評価についても家族と話し合いを行いながら治療を行うこととした。家族の希望である在宅移行に向け多職種カンファレンスも定期的に行った結果、終末期に自宅で過ごせた。重症児(者)の緩和ケアの進め方、在宅移行の報告は少なく、小児科医による対応だけでは限界がある。重症児(者)の管理には、多職種や成人対応科等の他科との連携が重要と考える。