日本重症心身障害学会誌
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症例報告
代謝性アルカローシス時にてんかん発射の増加した重症心身障害児(者)の2症例
三宅 進杉田 真喜雄岡崎 富男丸川 健一
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2020 年 45 巻 3 号 p. 273-278

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抄録

症例1は52歳の脳性麻痺とてんかんの男性で、胃食道逆流症による頻回の嘔吐を防ぐため胃瘻より排液していたところ、静脈血液ガス分析でpH7.59、HCO3- 62.8 mmol/L、K+ 2.81 meq/L 、 Cl- 81 meq/Lと異常を呈した。このときけいれん発作はなかったが脳波上右前頭部の棘徐波複合が頻発した。症例2は6歳10か月頭蓋内出血後遺症の男児で、生下時脳幹部動静脈奇形よりの出血がありけいれんを生じた。フェノバルビタール投与でけいれんは抑制されたが、頻回の嘔吐があり、症状軽減のため胃瘻からの排液を行っていた。4歳11か月の脳波検査で右後頭部に頻回のてんかん発射が見られ、静脈血液ガス分析はpH7.54、HCO3- 38 mmol/L 、K+ 2.82 meq/L、 Cl- 95 meq/Lと異常を認めた。両例とも胃瘻からの排液を中止し血液pHが改善するとともにてんかん発射は減少した。重症心身障害児(者)で嘔吐、胃吸引などに際してけいれんや脳波異常の悪化を生じた場合、その一因に代謝性アルカローシスをも考慮すべきと思われた。

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© 2020 日本重症心身障害学会
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