日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
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症例報告
気管切開の回避を目的に胸骨部分切除と腕頭動脈離断を選択し、呼吸障害が著明に改善した重症心身障害者例
井上 美智子吉永 治美産賀 温恵水内 秀次
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2020 年 45 巻 3 号 p. 267-271

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抄録

発作的な気管狭窄を来す気管軟化症と構造的な気管狭窄の合併のため呼吸不全が増悪した重症心身障害者において、気管切開を回避した外科手術により呼吸不全の改善を経験した。症例は手術時25歳の脳性麻痺の男性。17歳から高CO2血症のため、非侵襲的陽圧換気療法を施行した。筋緊張が強く19歳からバクロフェン髄注療法を開始、高度の側彎を認め、緊張亢進時には薬剤投与を要した。さらに術前10か月から気道感染を反復し、発作性に繰り返しチアノーゼを認めた。気道感染治癒後も筋緊張が増強し、酸素必要量が増加した。胸部CTでは気管が胸骨と腕頭動脈に圧迫され狭窄していた。これに対し、患者の良好な社会生活維持の観点を加味し、気管切開を回避した胸骨部分切除および腕頭動脈離断術を施行した。術後、日中の酸素投与は不要になり発作性の低酸素血症も消失した。胸骨部分切除および腕頭動脈離断術は、気管軟化症と構造的な気管狭窄により呼吸不全を来した患者において、社会的な制約を増加させることなく有効な治療法の一つと考えられた。

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© 2020 日本重症心身障害学会
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