日本重症心身障害学会誌
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基調講演 指定発言
ICTの活用:オンライン面会
三田 勝己赤滝 久美林 時仲
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2021 年 46 巻 2 号 p. 201

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抄録
Ⅰ.はじめに 新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)は急激な拡大と世界的流行を引き起した。全国の重症児(者)施設では対面面会が制限され、その代替策としてオンライン面会が浮上し、準備体制が十分とはいえないまま2020年春頃からスタートした。ICTの視点からすれば、入所者へICTを広く活用した初めての機会となった。 Ⅱ.アンケート調査 オンライン面会の実施状況を明らかにするために、日本重症心身障害福祉協会(以下、協会)の協力のもとでアンケート調査を行った。調査項目は最小限にして7項目を設定した:(1)回答者の属性、(2)面会場所、(3)開催日、(4)開催時間、(5)実施時間、(6)通話アプリ、(7)利用割合。アンケートは2020年10月29日に電子メールにて135施設に一斉配信され、97施設(72%)から回答を得た。回答施設中オンライン面会を実施していたのは65施設(67%)であった。 Ⅲ.オンライン面会の実施状況 1. 面会場所 オンライン面会は自宅のみならず、施設の専用面会室から行われた(以下、自宅面会、施設面会)。また、自宅面会と施設面会の両方を準備し、いずれかを選択できる施設もあった(以下、自宅・施設面会)。自宅面会と施設面会はそれぞれ65施設中21、20施設で行われ、自宅・施設面会は24施設であった。 2. 開催日時と実施時間 開催日は平日が64施設中26施設(41%)と最も多く、土日祭日を含めた毎日を合わせると41施設(64%)となった。さらに週数日を加えると55施設(86%)となり大半を占めた。その他は「保護者の希望日」が4施設、「病棟毎に設定」が1施設であった。 1日当りの開催時間は1時間以下が63施設中17施設、2時間以下が18施設であり、両者を合わせると56%と半数余であった。3時間以下は極わずかであり、3時間超えは20施設(32%)が占めた。その他は「保護者の希望時間」が5施設、「職員の都合」が1施設であった。 1件当たりの実施時間は最も多かったのが15分以内であり、次に10分以内、5分以内の順で、それらを合わせると51施設(81%)と大半を占めた。その他は「保護者の希望時間」と「取決めなし」がそれぞれ1施設であった。 3. 通話アプリ 通話アプリは8種類が使われた:Line、Zoom、Skype、Face Time、Google Duo、Sky Phone、面会君、Le Chien。65施設中53施設の使用アプリはこの中のいずれか1種類であったが、11施設が2種類、1施設が3種類を採用した。これらを合計すると78となり、これを母数として各アプリの使用割合を求めた。LINEの使用割合は53%と半数余であり、次にZoomが24%と続き、これら2つのアプリが約8割を占めた。 4. オンライン面会の利用割合 回答55施設について、入所者数に対するオンライン面会利用者数の割合(利用割合)を施設毎に求めた。利用割合は20%以下が20施設と最も多く、10%以下と30%以下を含めると45施設(82%)であった。面会場所毎に利用割合をみると、自宅・施設面会が25.0±19.3%(施設数n=20)と最も高く、次に施設面会が20.5±13.8%(n=17)、自宅面会が18.7±16.7%(n=18)であった。 Ⅳ.おわりに 面会制限はこれまでにも季節性インフルエンザの流行時にあった。甚大化する自然災害が面会を妨げる原因になりうることも今後想定される。また、保護者の高齢化がさらに進行すれば面会に来訪することが益々困難になる。オンライン面会が新型コロナに因る一過性の対策に止まることなく、対面面会とセットとして日常的に利用できる仕組みづくりが必要である。 なお、本調査結果の詳細は本学会誌<論策>(46巻3号2021年)に掲載予定である。 略歴 三田勝己:1967年岐阜大学工学部電気工学卒業。現在、星城大学名誉教授・客員教授。工学博士。 赤滝久美:1984年日本女子体育大学体育学部体育学科卒業。現在、大阪電気通信大学医療健康科学部教授・学部長。博士(学術)。 林 時仲:1990年旭川医科大学医学部医学科卒業。現在、北海道療育園園長。
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