日本重症心身障害学会誌
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O-5-08 クーリングによる筋緊張を緩和し、胃瘻漏れの改善を図る取り組み
則定 宏美
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2021 年 46 巻 2 号 p. 248

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抄録
はじめに 当重症心身障害児(者)病棟には、刺激や環境変化に対し筋緊張を起こしやすく、入眠や処置前には薬による鎮静が必要な患者(以下、A氏)がいる。A氏は胃瘻孔からの注入漏れにより、繰り返し周囲の皮膚にただれを生じている。確実な栄養や内服薬の摂取、皮膚炎予防のため、胃瘻漏れの一因となる緊張の緩和を目指して、アイスノンを用いたクーリングを実施した。 研究目的 経管栄養の患者の胃瘻漏れに対し、アイスノンによるクーリングを実施し、緊張緩和や胃瘻漏れへの効果を検証する。 研究方法 1)対象 A氏、30代男性、脳性麻痺、最重度知的障害。人工呼吸器装着。大島分類1、遠城寺式乳幼児分析的発達検査で運動機能2〜4か月 2)期間 2020年2年10月28日〜11月13日のうち14日間 3)方法 緊張スケールを作成。筋緊張による体温上昇でより強い緊張へつながることを防ぐためにクーリングを実施。脈拍数、胃瘻漏れの量、病室環境等を記録。1日を4時間帯に分け、前時間帯と比較し脈拍数の増加がないことでクーリングの効果を評価。 4)倫理的配慮院内の倫理審査委員会にて承認を得た。 結果 A氏へのアイスノンによるクーリングで、前時間帯に比べ脈拍数が増加しなかったケースが約26.7%あった。脈拍数が少ない時間帯は胃瘻漏れの量が少なく、脈拍数が多い時間帯は胃瘻漏れの量も多かった。脈拍数に比例し胃瘻漏れが増加することはなかった。 結論 アイスノンの種類や冷えの程度、交換頻度やタイミングで、一定の冷却効果の継続が難しかった可能性もあり、アイスノンによるクーリングで緊張緩和を図ることは有効性が高いとは言い切れない。しかし脈拍数が少ない時間帯には胃瘻漏れの減少がみられ、他の方法でも緊張緩和を図る必要がある。A氏の胃瘻漏れは胃瘻造設後の合併症、経年変化による瘻孔拡大である可能性が考えられ、空腸栄養チューブへの変更を検討する必要がある。
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© 2021 日本重症心身障害学会
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