抄録
A施設は1965年に開設した重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))施設で2018年11月に新築移転した。病棟が1つ追加され3棟体制となり看護師も新規採用され大幅に増員した。日本看護協会の「2017年病院看護実態調査」によると看護師の離職について、最近5年間は11%前後で経過している。A施設の離職率について2017年は5.7%に対し2018年は11.5%と離職者が約2倍になりで全国平均よりもやや高い状況になった。離職率が上がった要因に「重症児(者)の特性や療育」「障害児看護の難しさ」「家族支援」などが考えられる。病院から重症児(者)施設を選択した看護師にどのような働きやすさの相違があるのか調査することで入職看護師への配慮や関わり、重症児(者)施設での人材確保、育成について考える。
対象
入職して1年以上3年以内の看護師(新卒看護師を除く)28名【期間】2020年4月〜12月
方法
アンケート調査 病院と重症児(者)施設での相違と現職場の課題(質問記述式)
結果・考察
アンケート結果から病院と重症児(者)施設の相違を「システム」「看護」「入所者・家族」「クレーム対応」の4つに分類した。「システム」においては他部署と連携がとりやすい環境作りや医療事務が行う業務を一部看護師が担っているため簡素化、見直しが必要である。入職して初めて重症児(者)と関わる看護師は28名中25名であり、発達障害やけいれん対応などにおいて不安や難しさを示した。OJTにおいてほぼ全員が指導は分かりやすいと評価した。「入所者・家族」は信頼関係を築くこと、「クレーム対応」が難しいという結果がでた。家族看護を含めたケアが必要となる。また重症児(者)施設では長期入所者が多く、クレーム後も関わらなければならない精神的苦痛が就労意欲の減退につながると考える。クレーム対応の研修などコミュニケーションスキルの向上は必須であるが、スタッフが安心して就労できる組織作りが重要である。